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黄泉比良坂|イザナギが逃げ帰った黄泉の国へつづく道

古事記に登場する有名なシーン。黄泉の国への入り口とされる黄泉比良坂よもつひらさか。ここはイザナギ・イザナミ夫婦がお別れをした場所。

黄泉の国と聞くと、心霊スポットか何かだと思われがちですが、ちょっと違います。確かに人の生と死を別ける意味を持った場所ですが、日本神話においてここは全ての始まりの地でもあるのです。

 

古事記に見える黄泉比良坂

火の神を生んでしまったために命を落とした妻イザナミ。

古事記には出雲と伯耆ほうきの境にある比婆山ひばやまに葬られたとしています。

妻の死を受け入れられず黄泉の国まで迎えに行ったイザナギ。しかし、迎えに行くのが遅かったため、妻はすでに黄泉の国の民となっていた。

妻の忠告を無視し、黄泉の国での禁をやぶったイザナギは、妻を怒らせてしまい、黄泉の国の軍勢に追いかけられる羽目に。なんとか黄泉の国の軍勢を振り切ったイザナギは、黄泉比良坂まで逃げてきて、黄泉の国の入口を大岩で塞ぎ、妻に別れを告げます。

別れ際の夫婦喧嘩によって、イザナギから死の呪いをかけられ、日本国民は一日に千人が死ぬこととなり、イザナギは一日に千五百人を産み出す事を決めたのです。これが日本人の人口を決めることとなり、この黄泉の国へ行ったことがきっかけでイザナギは尊い神を産み出す事になります。つまり、アマテラス(太陽)・ツクヨミ(月)・スサノオ(海)です。

 

黄泉比良坂とは何か?

黄泉の国とはいわゆる死後の世界という感じがしますが、古事記ではたびたび登場。意外と気楽に行き来しています。最初に登場するのはこのイザナギ・イザナミのシーン。次に登場するのはオオクニヌシがスサノオに会いに行くシーン。

古代の出雲では風葬といって、死んだ人を埋めずに風にさらしたと言います。また、大王が亡くなると最期に一目会いたいという人が多かった為、体に朱を流し込んで腐敗を止め、石室に安置して別れの儀式を行った(モガリ)という。これが初七日法要や通夜の起源ともいわれている。

そんな風習から縄文時代の死生観として、人の生と死は隣りあわせで、身近なものだったのかもしれません。

さかという字はもともとさかという言葉から転じたとも言われ、この黄泉比良坂というのもあの世とこの世の境目という事を意味している言葉なのでしょう。

 

イザナミの御陵はどこか?

出雲(島根県東部)と伯耆(鳥取県西部)の境に葬られたとされるイザナミ。そんなイザナミの御陵として比定されている地は4か所あります。埋め墓と拝み墓が別だったという縄文時代の風習を考えると、これは埋め墓と考えられます。拝み墓は佐太神社の裏山にある磐座などが代表的ですね。

黄泉比良坂を中心に考えると東西と南にイザナミ陵の比定地がある事が分かります。そして北西には揖屋神社。

 

千引岩(ちびきのいわ)

イザナミが追いかけてくることに恐怖したイザナギは、千人の力でやっと動くような大岩を使って道を塞いだのです。その大岩がこれ。

 

千引岩のとなりには死者への手紙を受け付けてくれるポストが設置されています。別れた大事な人へメッセージを届けたい方は投函してみては。

 

岩の裏側を見ると木々がたくさん立っており、道はここで途絶えています。この道の向こうが黄泉の国だと思いがちですが!

実は反対側、つまり今くぐってきた鳥居の方角が黄泉の国と言われているのです!それではようやく黄泉の国へと歩いてみたいと思います。

 

黄泉の国への道

伊賦夜坂

ここから先が黄泉の国への入口。イザナギが逃げ帰って来た道を遡って歩いてみましょう。

古事記に書かれた伊賦夜坂いふやざか。地元ではイザナギが追いかけられたので追い谷とも呼ぶそうです。

 

桃の木

千引岩の近くにはイザナミの放った追手を撃退したと言われる桃の木があります。

なんとこれは黄泉比良坂をみんなが観光しやすいように整備するなか、地元ライオンズクラブの方々が植えられたものだそうで。

 

自生していた桃の木はこの看板の後ろの木だそうです。まさに伊賦夜坂の入口にあたります。

イザナミの放った追手は桃の実をぶつけられた事で退散していった。その功績を称え、桃の木は意富加牟豆美命おおかむずみのみことという神の名前を与えられたのです。

奈良時代に書かれた古事記は、中国の文化的影響が強かったのでしょうか。中国では桃源郷とうげんきょうという言葉があるくらい、桃の実は万病に効くとか、邪気を払うと信じられていたそうです。

 

この先を進んで行くと、森林に包まれていきます。。

 

塞ノ神(さいのかみ)

しばらく歩くと道が2つに分かれ、その分岐点に塞ノ神が鎮座しているのに出会います。

日本書紀によると、イザナギが「ここから先には来てはならぬ」といって投げられた杖から化生したのがサイノカミ。つまりここが色んな意味での境界線という事でしょうか。

 

道は真っすぐ行くルート、左に曲がるルートがあります。

 

左に曲がっていくと、どんどん山道を登っていきます。

そして最後は行き止まり。

昔はこの先に歩いていくと広瀬の方角まで通じていたそうです。

 

塞ノ神の場所までもどって、真っすぐ行くルートを歩いていきます。

 

すると民家が見えてきます。この道を真っすぐいくと揖夜神社の方まで行けそうです。現在は国道9号線が分断しており、直線的に歩いていく事は難しいですが。昔はひと続きの山道だったのでしょう。

この揖夜神社から広瀬の方角に向かう道を夜見路といい、黄泉比良坂を超えることを夜見路越えと言ったそうです。

 

夜見路越えの先に見えるもの

北西の①揖夜神社から③塞ノ神を通って④の行き止まり看板があるところを歩いていくと母塚山のイザナミ御陵の方角。これを夜見路越えというのでしょう。

古事記になぞらえると、①の桃木が生えているところから、③塞ノ神を通って⑥の方角へ歩いていくのを黄泉の国へのルートと言うのなら、神納峠のイザナミ御陵が黄泉の国なのでしょう。

また、現代の道で真っすぐ南に向かって進路をとれば比婆山もお墓山も説明がつかないわけではないという。。

 

揖夜いや神社

黄泉比良坂の北西に鎮座する揖夜いや神社。出雲風土記には伊布夜社と記載され、こちらも伊賦夜坂の比定地とされます。もちろん主祭神はイザナミ。

揖屋神社と黄泉比良坂をひとくくりに黄泉の国との境目ととらえると、千引岩との位置関係、イザナミの陵墓がどこかということも広い観点から検討できそうですね。次回は揖夜神社について書いてみたいと思います。

 

 

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