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揖夜神社|黄泉の国の入り口に鎮座する女神の正体とは!?

 

松江市東出雲町にある揖夜神社。この神社の近くには黄泉の国への入り口とされる黄泉比良坂よもつひらさか、別名を伊賦夜坂いふやざかと呼ぶ場所があります。一見すると普通の神社なのですが、そこには中海を隔てた壮大なラブストーリーが見えてきたり・・・

 

 

揖夜神社の御祭神

 

伊弉冉命いざなみのみこと

大巳貴命おおなむちのみこと

少彦名命すくなひこなのみこと

事代主命ことしろぬしのみこと

 

黄泉比良坂に近い場所という事もあり、御祭神にはイザナミのお名前が見えます。そのほかにはオオクニヌシ・スクナヒコの国造りタッグと、オオクニヌシの御子であるコトシロヌシが祀られています。

コトシロヌシは中海を隔てた対岸にある、美保神社みほじんじゃの御祭神ですね。

この揖夜神社の拝殿は写真の通り鏡が隠されていません。それどころか拝殿の壁はなく、どの角度からも見えるように配置されています。初めて見たとき、美保神社と同じパルテノン神殿のような開放的な印象を受けました。

 

揖夜神社の御由緒

この伊賦夜と同じ音を持つ揖夜神社は、出雲風土記に伊布夜社と見えます。具体的な説明は無く、謎の多い神社なのです。。。

揖夜神社のルーツを探すにはここで行われる神事や、周辺の神社の御由緒、語り継がれている神話などをヒントにしていくのがよさそうです。少しそのあたりを紐解いてみましょう。

 

穂掛祭と一ツ石神幸祭

毎年8月28日に行われる一ツ石神幸祭しんこうさいと、その前日に行われる穂掛祭ほかけまつり。神幸祭とは神社に祀られた神様をお神輿みこしに乗せ、氏子が暮らす街を歩き、神様にお見せするというものが一般的。

ところがこの揖夜神社の神幸祭は一味違う様なのです。

 

穂掛祭ほかけまつり

祭り前日の8月27日。

揖屋神社の北に位置する中海の袖師ヶ浦そでしがうらみそぎを行う。その後、社務所において新米、お神酒みき、焼米などの神饌しんせん(お供え物のこと)を調理する。

 

祭り当日の8月28日朝。

揖夜神社境内の75か所に穂掛榊ほかけさかきを捧げ、神饌をお供えする。穂掛榊とは稲穂を取り付けた榊の枝のこと。

 

このお祭りは豊作を感謝するものの様ですが、新嘗祭よりも3か月早く行うという時期的な不思議があります。また、境内75か所もお祈りを捧げる場所があるという不思議。

以前は祭日不定で、稲穂が育ち次第という感じだったそうです。現在は便宜的に8月28日になっているのだとか。

 

一ツ石神幸祭

かつては7月28日に行われていたのが、穂掛祭と同じ日に行われるようになったそうです。

17時30分、神社を出発したお神輿は神社近くの弁天灘で御座船(神船)に移られ、崎田鼻の一ツ石と呼ばれる場所に到着します。

18時。この一ツ石に稲穂と甘酒を捧げ、豊作豊漁記念の神事が執り行われます。そして御座船は西揖屋へ移動し、陸船(神幸丸)に乗り換えます。神社までの1kmの陸路を美装した神幸丸が練り歩く壮大なお祭りは夜中まで続くのです。

 

この一ツ石とは何なのでしょうか?これを夏の終わりに行うのはなぜなのでしょうか?

実は揖夜神社の御祭神に、神様が逢いに来るのだという伝承があります。その出会いの場所がここ、一ツ石であったと。。誰と誰が逢う場所だったのでしょうか?

 

美保神社に伝わる神話

美保神社といえばオオクニヌシの息子、コトシロヌシを祀る神社として有名です。その美保神社にはこんな神話があるのです。

コトシロヌシは、中海を渡り美保の対岸にある東出雲町揖屋いや三嶋溝杭姫命みしまみぞくいひめのみことのもとに夜な夜な通われ、明け方になると美保の社にお帰りになっていました。ところがある夜、一番鶏が時刻を間違えて、まだ夜も明けないうちにときの声をあげてしまいました。

急いで帰路についたところ、あわてられたせいか途中で船を漕ぐためのかいを海中に落とされ、仕方なく足で掻いている時に、その足をワニ(サメ)に噛まれケガをしてしまいます。

やっとの思いで美保に帰り着いたコトシロヌシの耳に、今度は正確な刻をつげる鶏の声が聞こえました。怒ったコトシロヌシはそれ以来ニワトリを忌むべきものとし、以後、美保・揖屋の人は鶏肉、鶏卵を食べず、鶏を飼うこともご法度としました。えびす様の絵がいつも片足を曲げていらっしゃるのは、この時の傷のせいです。

 

この神話を元に考えると、一ツ石に通っていたのは美保神社の事代主という事になりそう。揖夜神社にも事代主は祀られています。

 

 

しかし、揖夜神社に祀られている女神といえばイザナミとミホツヒメという神様!これは深堀りしてみると面白そうですね。

 

揖夜神社の境内

ご本殿

社殿は大社造り、千木は女千木、しかし鰹木は3本と奇数。御神紋は二重亀甲に剣花菱。方角は西(やや西南西)を向いています。

深読みすると女神を指す千木に、男神を指す鰹木。方角はイザナミの陵墓を向いていると言えなくもありません。

それよりも問題なのは・・・

出雲大社と同じ外観構造を持ちながら、内部構造は出雲大社と逆なのです!

 

出雲大社の御神座は参拝者に対して左を向いているのに対して、揖夜神社の御神座は右を向いているのです。

は西を向い社殿ているので、御神座は南向きという事になります。本殿右側には御神座を正面から拝礼できる場所が設けられています。

 

三穂津姫神社

三穂津姫みほつひめ

 

美保神社にもお祀りされている神。日本書紀にしか登場しない女神で、オオクニヌシの妻とされています。

一ツ石で出会うのがコトシロヌシとミホツヒメならば、コトシロヌシは親戚のおばさんに会っていたことになってしまいます。イザナミに会っていたとしても、随分と先祖のおばさんに会っていたことになり、ラブストーリーに聞こえません。。

一ツ石神幸祭が意味するところとは・・・

 

韓國伊太氐神社からくにいたてじんじゃ

素戔嗚命すさのおのみこと

五十猛命いそたけるのみこと

 

韓国、つまり朝鮮半島から日本を目指してきた二柱の神様、スサノオとその息子イソタケルというのは日本書紀由来の記述です。

イタテというのはイソタケルから派生した音であると考えられます。カラクニイタテという神社は出雲に3社、松江に3社の計6社あります。

 

荒神社

出雲地方でよく見かける木に藁を巻き付けた荒神こうじん様。

東出雲あたり、昔は意宇郡おうぐんと呼んだ地域では、チイナマイトと呼ばれています。これは「つなを巻いた」が訛って伝わったためだと言われたりしますが、それも本当かはわかっていません。

 

恵比須社

御祭神の表記がありません。恐らく事代主命ことしろぬしのみことでしょう。

 

天満宮

御祭神の表記がありません。恐らく菅原道真公でしょう。

 

荒神様と武神二柱

荒神様を前にして、二つの石祠が向かい合っています。

 

左手側にある祠には経津主命ふつぬしのみこと

 

右手側にある石祠には建御名方命たてみなかたのみこと

 

フツヌシとは日本書紀の国譲り神話において、オオクニヌシに国を譲れと迫った神ですね。一方タケミナカタはオオクニヌシの息子で、国譲りに反対した神として古事記に登場するものの、日本書紀には見えません。

よって、この対峙は日本書紀由来と言えます。

 

恵比須社

境内に二つ目のえびす様。

 

稲荷社

 

火守神社

御祭神の表記がありません。

料理の神、膳神かしわでのかみでしょうか?

 

謎の摂社

社名も御祭神の表記もありません。

 

夜見路

謎の摂社の横を上がっていくと、戦争慰霊碑と休憩スペースがあるのですが、

 

その奥にかつての山道へ通じていたと思われる跡が見えます。この方角の先には黄泉比良坂よもつひらさか、その先には広瀬方面へ続いていたとされています。

黄泉比良坂を越えていくので、このルートを夜見路越えと呼んだそうなのですが。今は国道9号線が分断しており、道が続いていません。

 

揖夜神社へのアクセス

JR揖屋駅から徒歩約12分。自動車でお越しの場合は10台ほど停められる駐車場もあります。非常にアクセスしやすい神社ですね。

 

まとめ

黄泉比良坂とともに黄泉の国の入り口に鎮座する揖夜神社。謎の一ツ石神幸祭という神事や、周辺の言い伝えを見るにつけ、いったい誰と誰が逢瀬を重ねていたのか気になります。

古事記や日本書紀を元に推論を重ねても矛盾だらけ。イザナミやミホツヒメという御祭神はいったいどんな意味を含んでいるのでしょうか。。

拝殿に置かれた鏡を覗くと、背後に鎮座する恵比須社が映り込むのですが・・・

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