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【国譲り神話】日本建国に関わる重要な意味を持った神話〜後編〜

稲佐の浜に降り立った武御雷(たけみかづち)は大国主命にこう言ったのです。

「汝ウシハクこの国は、天照大御神のシラス国ぞ!」

つまり、貴方が力によって勝ち取ったこの国は、本来天照大御神が統治する国だと言ったのです。

大国主は答えて言いました

「その問いには私はお答えできません。私の二人の息子がお答えするでしょう。」

二人の息子とは、事代主(ことしろぬし)と建御名方(タケミナカタ)の二柱の神です。

こうして二柱の神は大事な決断を迫られることになったのでした。。

 

 

一言で全ての責任を背負った事代主

国譲りの知らせは美保関で魚釣りをしていた事代主にも届きました。

全ての責任を一身に受け止めた事代主の決断は潔いものでした。

「承知した」

そう答えると天の逆手(あめのさかて)という特殊な柏手を打ち、乗っていた船を青柴垣(あおふしがき)に変えると、その中に御隠れになった。

以後事代主は美保神社のご祭神として丁重に祀られ、毎年4月1日~7日の間に、この青柴垣に御隠れになったことを再現する「青柴垣神事」が行われています。

ちなみに天の逆手は禁忌であり、具体的なやり方をお伝えする事はできません。

ただ、神道でも仏教でも通常と逆のやり方をするのは、呪詛の技法です。

国譲りに応じる一方で天の逆手を打って御隠れになる。

このあたりのお話しは公然と気軽にお話しする内容ではありません。

直会などでそっと質問するのがよろしいかと思います。

荒ぶる神、建御名方

事代主の一件を聞いた建御名方は憤慨しました。

突然の国の譲渡など理解できるはずもないのです。

建御名方は武御雷の前に、両手に大岩を持って現れます。

しかし、建御名方の提案は意外なものでした。

力くらべで雌雄を決する事を申し出ます。

何とも力強く、そして血を流さないで済む提案でしょうか。

ところが、建御名方が武御雷の手を掴もうとすると、その手は氷や剣に変化します。

建御名方が思わず驚き油断したところで、武御雷に手を握り潰され放り投げられました。

建御名方はやむなく敗走します。

しかし、武御雷の追跡は厳しく、ついに信濃の国まで追い詰められます。

建御名方はここで降伏を余儀なくされ、諏訪の地から一歩も出ない事を約束し、その命を安堵されました。

以後、建御名方は諏訪大社のご祭神として、信州に出雲の文化を広められたのです。

最後の決断を迫られた大国主命

二人の御子神の合意を得た武御雷はとうとう大国主命の元へ帰ってきました。

「二人の御子は承服した。貴殿の答えを聞こう」

「否?然?」

後にこのイナサという問いかけが「稲佐の浜」の由来となります。

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大国主命の答えは決まっていました。

「二人の息子が承服したのならば、お断りする理由はもはやありません」

「この出雲の地は天照大御神に譲りましょう。その代わり天照大御神の御子が住むような立派な宮殿を作っていただけるならば、私はそこに閉じこもり幽世を治める事とします。」

こうして国譲りは成ったのです。

そして、国譲りの際の約束通り、出雲への敬意の象徴としては出雲大社は建立される事になりました。

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その壮大さは「天日隅宮(あまのひすみのみや)」と名付けられ、

国は譲ったものの、出雲に王国があったことがわかるように、伊勢神宮と同じぐらい立派なものが作られたのです。

しかし、実は最初に建立された場所は現在の杵築の岬ではありません。

古事記には多藝志(たぎし)の小濱に建てられたと伝わります。

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その天日隅宮では沢山の料理が振舞われ、武御雷は盛大にもてなされました。

大国主は晩餐会と国譲りの調停を終えると、幽世大神となられました。

国譲りに見えるミステリー

幽世(かくりよ)とは現世の反対に位置する言葉で、例えるならば冥界のことでしょうか。

この解釈で合っているとすれば、大国主命は黄泉の国のような場所に御隠れになった事になります。

国譲りが意味するものは出雲の服従なのでしょうか。

しかし、天日隅宮を伊勢神宮と同じ社格で建立した事を踏まえると、出雲への敬意を払っている様が見受けられます。

出雲に国があったことを隠してしまえば、このような難しい歴史解釈をする必要もなかったことでしょう。

しかし、敢えて出雲を記載し、

決して戦争せずに国家が成立したという事を大事に描いたのです。

このような建国の由来を語る国は世界中探しても日本しかありません。

他の国は革命や戦争によって国が成立し、日本ほど歴史の長い国はないのです。

日本は世界一歴史のある国です

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大国主のもとへ2度も使者を送り、3度目の使者で交渉が成立した点を踏まえても、中国の歴史にもある「三顧の礼」を持ち出しているのでしょう。

また、この使者を大国主命が丁重に扱っていた点も、出雲への配慮と見えます。

しかし、幽世とはどこなのか、事代主はどこへ行ったのか。

謎は深まるばかりですが、この問題は追えば追うほど、史実に向き合うことになりますのでオススメしません。

出雲大社のご本殿を西から拝むとか、青柴垣神事を写真に撮るとかいう行為は個人的にはお控えいただきたいと感じています。

全ての神事には意味があり、神社の建築様式というのも意味があって設計されています。

裏技を探す人、ご利益のみを期待する人はかえって良いご縁を結べないものです。

どうかご先祖の意図をくみ取り、ありのままを受け入れる心で神社にお参りくださいね。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

皆様に良いご縁が結ばれますように!

  1. タナカ

    島根県の五十猛出身です。出雲口伝の方では秦国よりやってきたきた徐福(スサノオ)により大国主と事代主は騙されて幽閉され、殺されてしまいました。その後、出雲は大混乱となり、その後分裂してしまったのです。後に天孫族としての天皇家にはこの徐福の血も色濃く入っており、決して平和的に国が譲られてはいません。古事記や日本書紀では大部分が書き換えられているようです。大国主や事代主を暗殺した者の血が天皇家に受け継がれているという事実を隠したかったのでしょうね。事代主は徐福を恨んで呪いながら亡くなったと考えると最後に逆の柏手を打ったのも意味が繋がります。

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