スサノオの試練とスセリヒメとの駆け落ちー古事記神話
八十神達の暗殺計画から、オオヤビコの助けによって命からがら逃げた大国主命。
向かった先はスサノオが住む「根の堅洲国(ねのかたすくに)」でした。
前回までのあらすじ
そこで運命的な出会いがありました。
スサノオの娘、須勢理姫(スセリヒメ)との出会いです。
大国主命と須勢理姫
2人は一目で恋に落ちました。
少し前に八上姫と一晩過ごしたばかりなのに。。
そして大国主命は父君であるスサノオに結婚の許しを請います。
スサノオは簡単には応じません。そして大国主命はスサノオの試練を受ける事になるのでした。
スサノオ第一の試練
最初の試練は
「蛇がいっぱいいる部屋で一晩過ごす」というとてもシンプルで、簡単に死ねそうなものでした。
大国主命が絶体絶命のピンチと知った須勢理姫は父の目を盗んで、秘密のアイテムを差し入れます。
蛇の比礼(ひれ)という法力を持った布でした。
天女が持っている様な・・・こんな布です
比礼のおかげで蛇に襲われずに済んだ大国主命。無事に第一の試練を終えました。
スサノオ第二の試練
あくる日、大国主命は次なる試練を言い渡されました。
次は呉公(ムカデ)と蜂の部屋に閉じ込められ、一晩を過ごす事になったのです。
これはまた生きて帰るのは難しそうな試練ですね。大国主命はまたしても絶体絶命のピンチ!
しかしまた、愛しの須勢理姫が秘密のアイテムを差し入れます。
今度は呉公蜂の比礼という、ムカデと蜂を祓う法力を持った布でした。
大国主命はまたしても命拾いをし、第二の試練を終えたのでした。
スサノオ最後の試練
最後の試練は野原にて。
スサノオはおもむろに弓を取り出し、遠くをめがけて鏑矢(かぶらや)を放ちました。
最後の試練はこの矢を見つけてくる事。
大国主命は早速野原に分け入って行きます。
ところがスサノオは大国主が野原に入っていったのを確認すると、
何と野原に火を放ちました。
大国主命は気が付いた時には火に囲まれた状態に!またしても絶体絶命のピンチ!!
すると、どこからともなく声が聞こえます。
「中はホラホラ外はスブスブ」
よく見ると足元には小さなネズミが!
この言葉の言い回しは謎ですが、要するに
ほら穴があるから隠れろ!
ということです。
大国主命はほら穴に隠れて火が消えるのを待ちました。
そうとは知らず須勢理姫は大国主が死んだと思って泣き崩れます。
スサノオも大国主の死を確認する為に野原に出ると、、、
鏑矢を手にした大国主がまさかの生還!!
これを見たスサノオは大国主を家に招き入れます。
いよいよ結婚の許可が下りるのでしょうか!?
大国主命の成立と須勢理との結婚
ところがスサノオは自分の頭の虱(しらみ)を取るように言います。
大国主命は言われる通りスサノオの頭を触ると、、
そこにいたのは虱ではなく呉公(ムカデ)でした。またムカデですか・・・
大国主命はこの時、須勢理姫から受け取った秘密のアイテムを取り出します。
そのアイテムとは「椋(むく)の実」です。
大国主命は椋の実をかみ砕き、赤土を口に含んで吐き出しました。
するとスサノオは自分の頭のムカデをかみ砕いているのだと思い、
「かわいい奴だな」と思いながら眠ってしまいました。」
大国主命はこの隙に逃げようとします。
スサノオの神を家の柱に結び付け、大きな石で家の戸を塞ぎました。
そしてこれに乗じてスサノオの大事な宝物を4つも奪います。
宝物とは、生太刀(いくたち)、生弓矢、天詔琴、そして須勢理姫です!
宝物を持ち、須勢理姫を背負って出ようとしたとき、誤って琴の音を鳴らしてしまいます。スサノオははっと目を覚ましました。
スサノオは大国主命を追いかけようとしますが、髪が結び付けられている為に動けません。
スサノオはやっとのことで髪をほどくと、大国主命を追いかけます。
地上に通じる黄泉平坂(よもつひらさか)まで追いかけましたが、なぜかそこで追いかけるのをやめます。
そして大国主命に激励ともとれる言葉を投げるのです。
「その太刀と弓で八十神を倒せ!
そして大国主を名乗り、須勢理姫を妻として、宇迦の山の麓に立派な社を建てて住むのだ。この奴め!」
こうして大国主命という名を名乗るようになったのですが、それまでスサノオは大国主命の事を葦原色許男神(あしはらしこお)と呼んでいました。
古事記において、人間が住む世界は葦原中津国(あしはらのなかつくに)と呼んでいます。したがって、この呼び名は地上のタフな奴という感じでしょうか?
色々災難はありましたが、これでスサノオの娘を正妻に迎えた事になります。
それは同時に八上姫は正妻にはなれない事を決定づけたのです。。
八上姫がどんな決意で大国主命へ想いを向けていたのかというと。。
まさに死を恐れぬ覚悟で、真っすぐに求愛していましたよね。
八上姫からすると、「もう後には引けない状況」なのですが、、
結局は悲しい運命をたどります。
八上姫の伝説が残る「御井神社」の記事をご覧ください。
正妻となった須勢理姫は嫉妬深く、八上姫は大国主命を追いかける事を諦めます。。
スセリヒメとの結婚が意味するもの
大国主命はなぜ須勢理を「正妻」としたのか?
それはこの国の皇位継承権と関係があると見えます。
古事記・日本書紀を参考にすると(記紀と略)、大国主はスサノオの6代孫に当たります。
現在の皇室でも天皇となる権利は5代目まで。6代目が皇室と親密な関係を維持するためには、天照大御神の弟であるスサノオと血縁を持つ必要があったのです。しかしそれにしても6代前のじいさんの娘と言えば、どんなに背伸びしてもお付き合いできる人ではないのですが、その辺は「神話」という事で片付けられています。
これで大国主命は出雲の国を治める正当性を得た訳です。
この「正当性」というくだりが国譲り神話に繋がっていきます。
つまり「いったんは大国主命に国の管理を任せたが、天照大御神の孫が降臨するまでの間の委任であった。」という事になるのです。史実はさておき、このような正当性の記述は秀逸な編集がなされています。
大和王権が出雲の国に対して、「表現を誤ると大変な事になる」という特別なケアが働いたのでしょう。それにしても大分強引な展開です。そしてそもそも、スセリヒメとは誰なのでしょうか?
実はスサノオの娘という事は記紀に書かれていても、母親は誰なのかは書かれていないのです。
出雲にはお昼間には言えないストーリーが沢山あります。
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