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爾佐神社|ツクヨミの誕生地?できすぎたストーリー

松江市美保関町千酌にある爾佐神社。奈良時代に書かれた出雲国風土記にも記載され、また千酌という名前も島根半島四十二浦に名を連ね、このあたりの海岸線が古くからあったことを裏付けます。

神社の目の前にはすぐに日本海が広がり、少し入り江になったこの千酌ちくみは「北浦海水浴場」として親しまれています。古来より千酌は隠岐の島への渡り船が出る港であり、同時に出雲国府へ続く陸路の要所でもあったそうです。

爾佐神社のご祭神・ご由緒

都久豆美命つくづみのみこと

伊弉諾神いざなぎのかみ伊弉冉神いざなみのかみ

相殿

天忍日命あめのおしひのみこと大山咋命おおやまくいのみこと宇賀命うかのみこと

主祭神のツクヅミは出雲国風土記にしか見えない神。その記述は次のようなものです。

伊差奈枳命の御子、都久豆美命がここに鎮座していらっしゃる。だから都久豆美というべきであるが、今の人はただ千酌ちくみと呼んでいる。

出雲国風土記~島根郡~

この千酌は現代に残っている地名でもあり、その地名由来はツクヅミにあるようです。ツクヅミという音はツクヨミとも考えられ、古事記ではイザナギの御子であるので条件も一致する。

古事記でのツクヨミは黄泉の国から帰ってきたイザナギが禊を行った時に左目から誕生しており、誕生してすぐに「夜の世界を治めなさい」と命じられ、その後物語には登場しません。

日本書紀ではイザナギ・イザナミの子供として誕生し、やはり夜を治める為に天界へ送ったことになっています。

古事記由来であれば、夜の世界を治める事を命じられたツクヨミが、この千酌に鎮座していることになります!千酌は夜の世界を治める要所なのでしょうか!?

また、爾佐神社は爾佐三社とも呼ばれていたそうなのですが、これは現在のツクヅミ・イザナギ・イザナミの三柱を祀っているからなのか、本当は三貴子(アマテラス・ツクヨミ・スサノオ)を祀っていたからなのか、いろいろな想像をしてしまいます。

イザナギが妻の死を悲しんで黄泉の国(比婆山)へ訪ねていき、変わり果てた妻に驚いて黄泉平坂まで逃げ帰ってきた。そして黄泉平坂で妻との永遠の別れを告げた後、千酌で禊を行った時に三貴子が誕生。その後イザナギは朝酌の多賀神社に隠居したと考えると、九州や淡路島や滋賀までまたがるストーリーではなく、出雲地方で完結してしまいます!こりゃ出来すぎだ。。

爾佐神社の境内

御本殿

社殿は大社造で千木は男千木、御神紋は扇。

これは佐太神社正中殿と同じ御神紋ですね。佐太神社では竜蛇様(セグロウミヘビ)の斑紋を表すとされていますが、こちらはどうでしょう。社殿はやや北東の港の方角を向いています。

日御碕神社と加茂・新宮神社

惣御前神社

日吉神社

神馬像

爾佐神社では流鏑馬神事が有名。

爾佐神社へのアクセス

爾佐神社へ公共交通機関で目指すことは難しく、最寄りのJR境港駅から車で約25分もかかります。神社には駐車場も十分ありますが、ガソリンとトイレ休憩だけはお早めに済ませてから向かいましょうね。

まとめ

出雲国風土記にのみ見えるツクヅミ。その正体がツクヨミだとすると、古事記では描かれなかった本当のストーリーが見えてくるかもしれません。

黄泉の国から逃げてきたイザナギが中海(古代では王の海)で禊を行い、千酌で三貴子が生まれ、朝酌にある多賀神社にてイザナギは隠居した。なんにしてもこれは古事記に寄せすぎなストーリーですね。奈良時代の庶民に流行った信仰が今に残っているのかもしれません。ツクヨミは出雲にはあまり祀られていませんが、数少ないツクヨミの足跡を追いかけてみる事にしましょうか。

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