日本書紀と古事記の違いとは?
2020年に編纂から1300年を迎える日本書紀(にほんしょき)。実はどちらも天武天皇が編纂を命じた兄弟書なのです!
しかし、日本書紀って古事記と比べて人気が無いというか、とっつきにくいという印象がありますよね。そう思われている理由は日本書紀が悪い訳ではなく、書かれた目的が違う為に、書き方も違っているからなのです。
今回はそんな日本書紀の名誉を挽回すべく解説してみます。
日本書紀とはどんなもの?
日本書紀はいつ作られた?
720年 第44代 元正天皇の時代に完成
第40代 天武天皇(てんむてんのう)が編纂を命じてから39年の歳月をかけて制作され、第44代 元正天皇(げんしょうてんのう)の時代に完成!
古事記のなんと10倍近い製作期間!
日本書紀の作者は?
舎人親王(とねりしんのう)をはじめとした国の幹部が大勢関わって作成されました。
日本書紀の特徴
- 39年という長い制作期間
- 制作には国の幹部が大勢関わっている
- 全30巻という長編作品
- 全て漢文で書かれている
- 神話を省略して年表の様に書かれている
これらの特徴をまとめると、外国(中国)を意識して書かれた歴史書、つまり国の正史であることが分かります。
日本書紀編纂の目的
国外に独立国家であることを示す!
国民の間で伝えられてきた神話や口伝などは一旦気にせず、特に中国から見てどのような印象を持たれるのかを気にして描かれています。そのため天皇が100歳以上生きていたり、中国が理想としていた不老不死を匂わせるエピソードがあります。
当時は多くの国が中国の属国となっていった時代。。歴史的な正当性や文化的に進んだ国であることがアピールできれば、中国とも対等な関係を築けるという狙いがあったのでしょう。
逆に大和国が大事にしていた出雲国に関する記述はばっさりと割愛されています。この辺は国外向けの書物として、語る必要がなかったのでしょうね。
古事記とはどんなもの?
古事記はいつ作られた?
712年 第43代元明天皇の時代に完成
天武天皇が編纂を命じ、天皇の崩御によってプロジェクトが一時ストップ
元明天皇がプロジェクト再開を命じると、たった4か月で完成
古事記の作者は?
稗田阿礼と太安万侶の二人
稗田阿礼(ひえだのあれ)は、昔からの言い伝えを全て暗記している語り部、そして太安万侶(おおのやすまろ)がその言い伝えを全て書物に書き起こしたのです。
全3巻しかない短い内容ですが、その中に112首もの和歌を織り交ぜ、美しい物語に仕上がっています。これは太安万侶の文才であると考えられます。
古事記の特徴
- 4か月という短い制作期間
- 制作には二人しか関わっていない
- 全3巻という短編作品
- 漢字かな交じり文で書かれている
- 神話が全体の3分の1を占めている
制作期間の短さ、スタッフを少数精鋭に絞っている点、神話を大事に書いている点など、完全に国内向けに急ピッチで作られたことを示していますね。
漢字かな交じり文というのは現代の日本語の原形となった文体ですが、これは外国人に読まれないための暗号化なのです!
古事記編纂の目的
国内に天皇家の正当性を示すこと!
古事記の編纂を命じた天武天皇の時代は、まさに争いの時代でした。。
天武天皇の即位から少し前には仏教を輸入するかどうかで戦争。天皇の代わりに大きな権力を振るった蘇我氏が天皇に殺害されるというクーデター(大化の改新)。
そしてそのクーデターを起こした天智天皇が亡くなると、その息子たちが皇位継承権を巡って戦争(壬申の乱)。
そして壬申の乱に勝利し、皇位継承権を獲得したのが天武天皇なのでした。。。
そして天武天皇は戦争を終結させるため、様々な施策を打ちます。身分制度の整備、憲法の整備などたくさんありますが・・・
特に古事記の制作は急ピッチで行わないと、また天皇家に権力を欲しがる豪族が群がってきたり、皇族同士で争いごとが起こってしまうという危機感があったのでしょう。
しかし、実際には稗田阿礼にこれまでの伝承を読んで覚えるように命じた後、すぐに天武天皇は亡くなり、古事記プロジェクトはストップしてしまいます。その後、元明天皇の時代になって再度プロジェクト開始を命じられ、僅か4か月で編纂するという慌てぶりだったのです。
まとめ
国を統治するために作られた古事記と日本書紀。古事記は国内の統制のため、日本書紀は海外から侵略されないためというそれぞれ違った目的を持っていました。
統治者である天皇の家柄や御由緒が分からないというのは、いつでもクーデターが起こってしまう危険性がありますよね。そういう意味で古事記は紙面の多くを神話に使い、中でも特に出雲については丁寧に解説しています。
外交の面では、中国から尊敬されるエピソードをふんだんに盛り込んだ日本書紀が活躍。これによって天皇の権威性は海外にまで示されたのです。
現代の日本人にとってはどちらも神話の部分が信じられず、あまり大事に読まれていない感がありますよね。これは戦後の歴史教育がそうさせているのですが、神話の部分も含めて日本の歴史は繋がっているんです。だって日本は2600年以上の歴史を持っているんですから。。この機会にぜひ読んでみてくださいね!
古事記の入門書
皇室の旧宮家である、竹田恒泰先生の書籍。古事記には非常にたくさんの神様が出てきて、全部覚えようとすると挫折します。。実は古事記って再び登場する神はほとんどないんです。この本は覚えた方がいい神様とそうではない神様を見分ける目印がついているというスグレモノ!
さらに皇室側の視点で見た読解がすごく面白い!そして丁寧な解説!初めて古事記を読むなら、この本が絶対おすすめ!
日本書紀の入門書
神話や和歌が少ない日本書紀は、読み進めるのがつまらなくなりそうですよね。でもこの本なら漫画表記と文字表記がペアになっているという、画期的な工夫がなされています!
文字だけ読みたい人にも、漫画だけ読みたい人にも一冊で対応可能!しかも、どっちを読んでもある程度内容がつかめてしまうという・・・初めて日本書紀読むなら絶対これ!
超高速で理解する古事記
この記事へのコメントはありません。