出雲大社の御本殿で私たちは誰にお祈りしているのか?
出雲大社のご祭神と言えば大国主命。
そのことは揺らがない事実としてあります。
そのご祭神は御本殿内部で西を向いている、すなわち参拝者に対して真横(左向き)になっていることは有名ですね。
そのために御本殿脇には御神座を正面から拝める遥拝所が設置されています。
正確には筑紫社の外側から拝む事になります。
西を向いている理由などはこちらに考察しています
大国主命にお願い事を聞いていただきたいという想いの強い方は、西から熱心に御祈願なさっていますが、そもそも正面から参拝した際には誰を拝んでいるのでしょうか?
不思議な御本殿の内部構造
「大社造」という建築様式の特徴として、9本の柱がお社を支えており、真ん中の縦3本の柱は妻入屋根の接合部、つまり屋根の中心を支える大事な柱です。
特に真ん中の柱は心御柱(しんのみはしら)と呼ばれ、その右側の柱との間には間仕切りが設けられています。
つまり、参拝者からはこの間仕切りが邪魔をして御祭神に直接お目にかかることができない構造となっているのです。(もちろん壁があっても、拝殿越しであっても、お祈りなさったことに対して大国主命はお聞きいただいているはずですが。)
さらに驚きなのが、参拝者に対してまっすぐ向いている神々が意味深なのです。
画像引用:出雲大社公式サイト
御客座の神とは?
- 天之御中主神(あめのみなかぬし)
- 高御産巣日神(たかみむすび)
- 神産巣日神(かみむすび)
- 宇麻志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこじ)
- 天之常立神(あめのとこたち)
以上の五柱の神です。この神は別天神(ことあまつかみ)と呼ばれ、古事記の中でも一番最初に記載されている神です。
つまり天地開闢(かいびゃく)の神であり、出雲の土着の神というよりは宇宙創成・地球創成の神といったところ。
まさしく「お客さん」という感じの神なのです。
和加布都努志命とは?
この神は「わかふつぬし」とお呼びします。
出雲風土記では大国主命の御子とされ、牛飼いの神、天御領田(あめのみた)の管理者とされています。
出雲風土記の原文
和加布都努志命が天と地が初めて分かれた後に天御領田の長としてお仕えなさった。その神が郷の中に鎮座していらっしゃる。だから御田を見る神の意味で三太三(みだみ)という。
これは美談(みだみ)という出雲市平田町の地名由来神話として残されている一説です。
天御領田というのは天津神の御田、つまり天照大御神(大和朝廷)へ捧げるための作物を作る田畑だったのでしょう。
この神様はお名前の中に「ふつぬし」という大事なキーワードを含んでいます。
和加布都努志命は経津主命なのか?
この神が本当に経津主命なのであれば、色々と大変な問題です。
なぜならフツヌシとは国譲りを迫った神であるからです。
日本書紀にのみ登場する神であり、古事記においては国譲りを迫ったのはタケミカヅチとされています。
国譲り神話についてはこちら
色々問題・・・と申しましたのは、出雲の大神様にお参りしているはずが、
真正面にいらっしゃるのは大和側の神様だけということです。
和加布都努志命についてはもっと調べていく必要がありそうです。
和加布都努志命の伝承が残る、三太三と大野の地にある神社のご由緒を次回記事に特集したいと思います。
ちなみにフツヌシをお祀りする神社
タケミカヅチをお祀りする神社
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