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大埼神社|イザナミを祀る母坂さん

松江市島根町大芦に鎮座する大埼神社。日本海側の四十二浦にも大芦浦として古くから巡礼され、出雲国風土記の島根郡には大埼の社として登場します。この大埼は大芦の地名由来になったという説もあるそうです。そんな古くからある神社のご由緒を紐解いていきましょう!

大埼神社のご由緒

奈良時代に編纂された出雲国風土記の島根郡に大埼の社、大埼川辺の社と二社見え、これが現在の大埼神社と、近くにある大埼川辺神社であるとされます。

この「大埼」は”おおさき”ではなく、”おおはし”と読むと、”おおはし”が訛って現代の地名”おわし”になったのだとされる説。
また、はしさきは同じ意味を持つ言葉であり、”おおはし”と”おおさき”は意味的にも同じ。だから元々は”おおさき”と呼んでいたが、埼が端に転じて地名が”おわし”になったのだとする説。どちらが史実として正しいのかは不明ですが、僕としては大埼をおおはしと読んだ方がしっくりくるので、「おおはしのやしろ」が地名由来になった説を支持したいです。

大埼神社の御祭神

伊弉冉尊いざなみのみこと

なぜこの地にイザナミが祀られているのかというと、それは近くにある大埼川辺神社のご由緒に理由が伺えます。江戸時代に松江藩が編纂した雲陽誌によると次のように説明されています。

神伊弉册尊いざなみのみことの産のけがれを見て潮と水との堺に来て、神意を潔たまひ川邊に社を建て、よりて大埼川邊の社といふなり

雲陽誌~大埼川辺神社の由緒~

つまりイザナギノミコトは妻イザナミの出産のケガレを受け、最も清浄とされる海水と淡水が交わる汽水域でみそぎをおこない、その川辺に社を建てたということですね。

大埼川辺神社は日本海から少し内陸部に入った位置に鎮座し、神社の前を流れる森田川には海水が混じるのかもしれません。それに対して大埼神社は日本海沿岸に位置しています。

また、大埼神社はイザナミを祀るので別称を母坂はんさかさん、大埼川辺神社はイザナギを祀るので国主くにすさんと呼ばれているそうです。

せんたく岩

大埼神社の前にはせんたく岩と呼ばれるスポットがあります。まるでさざ波をそのまま岩にしたような不思議な形をしていますね。古来より清浄な潮を汲むため、身を清めるためにたくさんの人々が訪れたと言われています。

千酌にある爾佐神社もイザナギが禊を行って三貴子を生み出したというストーリーでしたが、この大埼神社では妻が出産したことで穢れを受けたので禊に来たと。

たくさんの出血を伴う出産を穢れととらえる風習は昔からあり、死よりも重い潔斎を行います。少なくとも出産後の7日間は人と会わない、その後も75日は神事や仕事への復帰はできないなど。穢れと呼ぶと誤解を生みそうですが、これは出産したお母さんを気遣う動きにも見えますよね。

話を戻して、イザナギは妻の出産後に禊を行って大埼の地に来て、次は妻の死後、黄泉の国から帰ってきて千酌で禊を行い、朝酌に隠居したと。

大埼神社の境内

御本殿

社殿は春日造で、千木は女千木、御神紋は扇紋、方角は南を向いています。

参道

階段を上がってすぐの道。少し薄暗く陰のを感じます。

拝殿が見えたところで空が見え、陰と陽が切り替わる感じがします。

無数に置かれたコマイヌ勢!!こ、これは!?

弁財天

大埼神社から日本海側に歩いていくと、小島の上に鎮座しています。

水は非常に透明度が高く、古くから禊の地であった事を証明しているようです。

弁財天とは七福神の呼び方ですが、神道では市杵島姫命いちきしまひめのみことのこと。宗像三女伸ですね。

大埼神社へのアクセス

島根町にはJRなどが通っていません。自動車で向かうことをお勧めします。だんだん道路川津ICを降りて約14分です。大埼神社には駐車場がありませんが、海岸沿いの道路は交通も少ないので短時間なら路上駐車できそうです。

まとめ

四十二浦の大芦浦。その地名由来となった大埼神社には周辺の大埼川辺神社と合わせて見ると、古事記に見るイザナギ・イザナミの神話が根付いていました。古事記のストーリーは後付けだとしても、美しい海には古来から禊の信仰があったのかもしれません。

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